アメリカからコンピテンシー評価という考え方が日本に入り、2000年頃から大企業を中心に導入され広がりを見せました。では、コンピテンシーとはどのような考え方で、従来の日本の人事評価とどう違うのでしょうか。
コンピテンシーを日本語に訳すと「成果を生み出す能力」ということになります。特徴的なのは人事評価要素の引き出し方です。
社員の中で成功しているグループと普通のグループを比較し、成功しているグループに備わっている特徴的な行動要素を定義して評価しようというものです。
現在、自社内で高い業績、成果を上げている人材がいるかと思います。この人材が成果を上げている理由について、考えてみたことはあるでしょうか。従来の評価ではアウトプットされた成果だけに着目されていますが、その成果を生み出している要因(行動特性)こそ注目すべきポイントであるという考え方です。
このように、ある業務の成果につながる行動特性を見出して、その情報を基に人員配置や研修、人材配置を行っていくことで社内全体の業績や成果を高める考えが、コンピテンシーなのです。
企業だけでなく教育機関や研究機関でも採用され、人事評価だけでなく人材採用や育成にも利用されているコンピテンシー評価。優れた評価手法ですが、やはりメリットとデメリットが存在します。ここでは、コンピテンシー評価のメリット・デメリットを紹介します。
コンピテンシー評価では貢献度がわかりにくい成果に対しても評価できるというメリットがあります。成果だけでなく、成果に至るまでのプロセスも評価の対象となっているからです。
数字に表れるような成果を出した本人でなくとも、その成果を得るまでに重要な役割を果たしていたり、サポートなどで貢献したりしているのであれば、その内容も評価してもらえます。
よって、貢献度がわかりにくい成果に対しても評価してもらえるので、社員は不公平感を感じることが少なく、評価結果に納得が得られやすいのも特徴です。
コンピテンシー評価は社内で共有することで、理想とする行動特性を他の社員にも反映できるというメリットがあり、人材育成に役立ちます。また、人事評価のコンピテンシー項目は、採用の現場でも利用できます。
各項目を測定するための質問を設定することで、面接や筆記試験などで利用できるのです。採用の現場でコンピテンシー項目を利用すると、会社の理想とする人材を採用できたり、採用時の人材評価と実際に採用してからの評価のギャップを小さくできたりします。
コンピテンシー評価では、評価があまり高くない場合も行動特性を意識して行動することで評価が上がるので、目標がわかりやすく、社員のモチベーションアップになりやすいのが特徴です。
改善するにはどうすればよいのかすぐに理解できるので、行動に移しやすく、達成感も感じやすくなります。
コンピテンシー評価で必要な行動特性を見出して評価基準として使えるようまとめ上げるには、かなりの時間を要してしまうというデメリットがあります。モデルを選定・抽出(もしくは設定)し、行動特性を抽出した後、項目を設定する必要があるためです。
モデルの行動特性を見出すというのは分析が必要で、評価基準の設定の難易度が高いのも、時間がかかってしまう要因です。
コンピテンシー評価は組織や時流の変化が大きいと貢献した人を評価しにくいのが難点です。
これは、評価基準の設定に時間がかかるため、少なくとも1年は同じ基準で評価する必要があります。よって、組織や時流の変化が大きいと評価基準が現状に合わなくなってしまい、貢献した人を評価しにくくなってしまうためです。
評価基準の設定に時間がかかるため、メンテナンスやアップデートに手間がかかってしまうのもデメリットです。
組織や時流の変化が大きいと、モデルや特性の抽出と項目設定からやり直すことになってしまい、メンテナンスやアップデートにも多くの工数がかかってしまうのです。
コンピテンシーは、かつて米国で人事評価の基準とされていた「学歴」や「IQ」への疑問から生じた考え方です。
従来の基準で同じレベルと考えられる職員が、実務で一定期間を過ぎるとパフォーマンスに格差が生じるケースが散見されたことから調査が始まりました。
一般的に、高い業績を出す人は知能や学歴が高い人と考えがちですが、必ずしもこれがあてはまるわけではなく、特定の行動特性が関係していることが分かったそうです。
そのためコンピテンシーには従来と違って「学歴やIQは高くないが特定の職務において潜在能力が高い人物」を評価できることが特徴としてあげられます。
コンピテンシー評価は具体的な行動傾向を重視する評価方法で、知識や技術そのものよりも、スキルを使ってどのように成果を生み出しているかという行動を評価基準とします。
従来の能力評価では、職務遂行能力で昇格基準を定義づける職能資格制度が普及しましたが、職務遂行能力というのは、具体的な仕事名称がついた能力表現であると言えます。
例えば「販促の企画立案ができる」「予算管理表を運用できる」といったものです。評価についてもその仕事ができているかどうかを評価するので、ある職域で顕在化した能力を見るという点では明確であると言えます。
コンピテンシーは成功者の行動特性という形で基準を示すので、職務遂行能力ほど具体的な能力項目を設けてはいない場合が多いようです。
例えば、他者への影響力やチームワーク、起業家精神などといった項目が挙げられます。本家のアメリカではどちらかというと、人事評価というよりは採用や管理者選抜に使われた考え方だったという背景もあり、導入の際にはそのあたりの背景をよく理解して検討する必要があるでしょう。
数字に未だ表れないポテンシャルを評価するのがコンピテンシー評価です。社員の潜在能力を顕在化させ、実際の行動に繋げるコンピテンシー評価。評価者によるブレも少なく、公平性を担保できる評価方法といえるでしょう。それだけでも社員のモチベーションアップにつながる可能性があり、従来の方法との差異を検討してうまく取り入れると良いでしょう。
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